会社員ライブラリー

しがないサラリーマンの書評やエンタメ鑑賞の記録

【書評】サブカルを諦めないビジネスパーソンに送る金言集――『サブカルサラリーマンになろう』

 「いい年して〇〇が好きなの?」

 そう冷や水を浴びせられた経験はないだろうか。かくいう私は幾度かある。「〇〇」には固有名詞であったり普通名詞だったり、さまざまな言葉が入るわけだが、それは得てして「サブカルチャー」(サブカル)にカテゴライズされるものだった気がする。

 確かにサブカルは「主流文化(メインカルチャー)に対する副次文化」であり、主に若者を中心に形成されていることは紛れもない事実だ。それは認めるとして、年を重ねたらサブカルと決別しなければならないのだろうか。そもそもサブカルに年齢制限があるのか。サラリーマンとサブカルは両立できないのか……など、さまざまな疑問が泡のように浮かぶものの、冒頭の言葉にまともに反論できず、浮かんだ疑問もたちまち儚く消えていった。

サブライフを彩る一冊

 そういう意味では、本書は「いい年して」サブカルに傾倒するビジネスパーソンの背中を押す一冊だ。

 本書ではサブカルを「サブライフを形成するカルチャー」と定義し、会社員をメインの人生とした場合の、もう一つの人生を彩る文化として位置づける。会社員生活をメインに据えつつも、サブとしてのカルチャー生活を充実させる。そんな前向きなマインドを持った「サブカルサラリーマン」になるための箴言が108も収録されている。

 「PCのデスクトップにカルチャー系活動フォルダをつくる」「カルチャー評論バディを見つける」「サブカル日記をつける」など、サブカルにフォーカスした金言はもちろん、「自分の年齢を自覚する」「メールや書類はライターへのトレーニング」「資料作りを雑務と捉えない」といった、日常業務にも生きるであろう示唆が十二分に盛り込まれている。

 思うに、会社員生活とサブライフは対立するものではなく、相互に補完し合うものではないだろうか。サブライフが充実することで、仕事にもハリが出る。そしてその影響が組織、そして会社全体へと波及していく。サブカルを極めることで、こうしたシナジー効果も生まれるのだ。

 著者自身、大手広告代理店在職中に音楽評論家として活躍しており、現在は同社を早期退職し、評論家や著述家としてサブカルライフを謳歌している。そんな著者が直々に書き下ろした一冊。本書を読み進めれば、彩り豊かな「サブカルサラリーマン生活」になること請け合いだ。