会社員ライブラリー

しがないサラリーマンの書評やエンタメ鑑賞の記録

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】「普通」という価値観に一石投じる――『コンビニ人間』

本作が投げかけるのは伝統的価値観への疑問だ。学校を卒業したら正社員として働く。結婚・出産を経て温かい家庭を築く。孫にも恵まれ、定年後はまったりとした余生を過ごす。大多数の人間が送るであろう生活。しかしそれは括弧つきのものでしかなく、「普通…

【書評】「ヴィクトリア朝京都」を"迷"探偵たちが駆け巡る――『シャーロック・ホームズの凱旋』

あるときは「”腐れ大学生”が跋扈する並行世界」として。またあるときは「人とのご縁が紡がれる場所」として。またあるときは、「現実と異世界が交錯する妖しげな街」として。多彩なアプローチで「京都」を描いてきた著者。本作では「ヴィクトリア朝京都」と…

【書評】ニュートラルな視点で世界を見つめる――『成瀬は信じた道をいく』

完全無欠で唯一無二――。あの成瀬が帰ってきた。本作は昨年3月に出版された『成瀬は天下を取りにいく』の続編である。 『成瀬は天下を取りにいく』は滋賀県大津市在住の中学生・成瀬あかりとその周囲の交流を描いた短編集で、発売からわずか1年で10万部を突…

【書評】「天下を取る」浮世離れした若者の物語――『成瀬は天下を取りにいく』

成瀬あかりは“浮世離れ”した人間である――。物語に触れるなかでそんなイメージが沸き上がってきた。 本作は滋賀県大津市の女子中高生・成瀬あかりと、その周囲の交流を描いた連作短編集で、一つのエピソードを除いてあかりに関わる他者の視点で物語が進んでい…