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【ナナシス】ナナシスの新しい"ハジマリ"を見た――Tokyo 7th シスターズ 2053 1st Live "Startrail"

 2015年5月31日。私は東京・お台場にあるZepp Tokyoに向かっていた。ナナシスの記念すべき1stライブ「H-A-J-I-M-A-L-I-V-E-!!」(ハジマライブ)に参加するためだ。季節を先取りした暑さのなか、物販で5時間並んだことは今となっては良い思い出だし、何より、これまでスマホを介して接していたナナシスの世界に直に触れた感動は、今でも脳裏に焼き付いている。今もこうしてナナシスに魅力を感じているのも、ハジマライブの光景が印象に強く残っているからだろう。

 ……なんてことを考えながら、昨日の私は東京都府中市にある府中の森芸術劇場に赴いていた。2023年3月4日。あの日から8年の時がたち、再び「ハジマリ」の瞬間を目のあたりにする。EPISODE.2053による単独ライブ「Startrail」。いわば「2053組のハジマライブ」に参加するのだ。高ぶる気持ちをおさえつつ、軽快な足取りで会場へと向かっていた。年を重ねるごとに高揚感を感じることが少なくなってきたが、この日の私は珍しく気分が高まっていたのである。8年前のハジマライブのときのようにーー。

疑似「Tokyo-Twinkleフェス」

 早速、ライブの話をしよう。

 Startrailの開幕を飾るのはもちろん「Stella MiNE」だ。「Protostar」のイントロが流れ、星影アイ(天希かのんさん)、月代ユウ(天野聡美さん)の2人がせり上がりで登場すると会場のムードは一気に最高潮へと達する。

 途中MCを挟んだものの、全5曲を持ち味である疾走感あふれるメロディーと躍動感あふれるパフォーマンスでノンストップで駆け抜ける。ゴリゴリのテクノミュージックもいい。今回は声出しNGだったが、今後声出しが解禁されることでより盛り上がることだろう(特に「Be Your Light」)。

 今回のライブで初お披露目となった「RiPoP」はStella MiNEに続いて登場した。「ゴチャメチャ×ワンダーランド」で、テクノミュージックでトリップした支配人に先制パンチをくらわすと、続く「ライフ・イズ・サーカス」で一気に自分たちの世界に引き込む。「可愛くなければ意味がない」という恋渕カレン(七海こころさん)の美学よろしく、会場全体に「カワイイ」を振りまく2人のパフォーマンスに釘づけとなった。一ノ瀬ミオリ(小茅楓さん)の後輩キャラもいい(小茅さんの「中学生時代からナナシスをやっていた」発言に頭を抱えたのは内緒)。

 RiPoPのキュートさが際立ったのも、StellaMiNEの次だったからだろう。構成の妙である。

 続いて登場したのが「Astelrine」だ。「みんなのもとに会いに行く」という奈々星アイのモットーよろしく、左右のステージ横の花道からアイ、朝凪シオネ(山田麻莉奈さん)が、ステージ中央から一ノ瀬マイ(星ノ谷しずくさん)が登場。3人で三角形のフォーメーションを描くというAsterlineらしい演出である。

 RiPoPからのAsterlineという流れに、客席近くからの登場。これは先日公開された「スター・ライト」第6話を彷彿とさせる。Asterlineが登場するその瞬間、府中の森芸術劇場は「Tokyo-Twinkleフェス」会場と化したのである。「Starlight☆Asterism!!!」のイントロに合わせて舞台上へと向かう2人の近くに、「規制線を抱えた支配人の姿」を夢想した支配人は私だけではないはずだ。

 ユニットとしては最後の登場となったのが「Roots.」である。これまでとは打って変わってアングラでアナーキーな雰囲気をまといながらユウ、タン・シヨン(橘一花さん)、フラナ・リン(長谷川玲奈さん)の3人が登場。「Find Me」「WONDEЯ GIRL」「Hidden Stages」「New Age」の4曲を披露した。

 Roots.の持ち味である全身をフルに使ったパフォーマンスはこの日も健在。面持ちこそ氷のようにクールだったが、その奥に秘めた野心にも似た情熱は支配人にもきっと伝わったに違いない。

8年前の「あの日」に似た感情

 ライブの最後を飾るのはオールキャストでの「Along the way」。先日のアニバーサリーライブの表題でもあるこの言葉には「道中」という意味が込められているという。2053組の門出を飾るにふさわしい楽曲だ。

 かくしてStartrailは幕引きとなった。終わったみれば2時間、あっという間に終幕を迎え、ライブ前の高揚感も気づけば脱力感に変わっていた。「ロス」である。ライブが終始充実していた何よりの証拠だろう。

 もちろん、所々で課題に感じることもあったし、改善してほしい点も少なからずあった。ただ、今回のライブを終えた瞬間に蘇ってきたのは、8年前のあの日に抱いた感情そのものだった。高揚感。脱力感。時間、空間こそ違えど、ハジマライブと同じ感情が込み上げてきたのは、今回のライブが自分の中で納得のいく仕上がりだったからにほかならない。

 すでに2ndライブの開催も決定するなど、今後の飛躍にますます期待がかかる。そんな2053組の「ハジマリ」の場に立ち会えたことを光栄に思う。